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ホームブログ人生のタイミングのよって - Magical Furniture
2024.07.05

人生のタイミングのよって


香川県高松市の牟礼町に行きました、石が天板のサイドテーブル用の石の仕入れのためです。
牟礼町は庵治石と呼ばれるブランド石の産地で町にはたくさんの石材所があって、町からは庵治石を取っている山の石切場がどこからでも見える。
石の産地の街並みは他の工業地帯とは違って清らかな風を感じれたのが新鮮でした。
お邪魔した髙橋石材さんでは工場をぐるっと案内していただいて、その後 AJI PROJECT のショールームにも連れて行っていただきました。
石という素材の加工方法を教えてもらい、実際に作業を見させてもらって印象的だったのが「手仕事」でした。
あんなに硬く加工しにくそうな素材ですが、切る、削る、磨く、といった作業は機械は使えど手作業だなという印象が強く、木工と同じだと思って親近感が湧いたものです。
石材所にとって一番儲かる仕事は?と聞いたら「お墓」と言っていました。
キメの細かい庵治石で作る墓石は最高級品で祖父の代はそれで大きくなったとか。
でも時間は流れてお墓を持たない人も増えてお墓を作る機会は減ったそうです。
そんな書き方をすれば暗くなりますが、庵治町には寂れた温泉街みたいな暗い雰囲気はなくて、なにか新しいことが起きそうな夜明け前の空気があったように思います。
墓石ではない石で作れるもの、それを模索するポジティブな意志が作っている雰囲気かもしれません。
マジカルファニチャーでも石を使った家具を引き続き考えていきたいと思います。

そんなことで訪れた牟礼町にはイサム・ノグチ庭園美術館があります。
初めて雑誌で知ってから かれこれ20年近く気になっていたけど行ったことがなかった美術館です。
大地の彫刻家と呼ばれるイサム・ノグチが晩年に過ごして製作していた場所に石の作品が無数に設置されていて、屋内の蔵の中には代表作の大きなエナジーヴォイドがありました。
地中美術館で見たウォルターの作品でも感じたことですが、ここのエナジーヴォイドを見て石には引力があって空間を歪ませているなと思い身体が引っ張られるように感じました。
この感覚が私が石の家具を作りたくなった一因でもあります、石の魅力というか、石って面白いとイサム・ノグチの作品群を見て改めて確認できました。
他にも人工の丘を丸ごと作品として整備した庭も居心地が良く、刺激的で心休まる1時間を過ごせました。
見終わった後に「いま見たからよかったのかも」と思いました。
音楽でも映画でもなんでもそうですが、同じものでもその人生のタイミングのよっては何も思わなかったり、逆に心に刺さったりするものです。
20年越しに見れたことに意味があるのかも、そんなことを少し神聖な風が吹いているように感じたイサム・ノグチ庭園美術館の丘の上で考えていた。